ちびちび ちびゆうじ編 サンプル

 考えても結論の出ない自問に溜め息をつき、ああそれより、どうするかな……と、カイジが畳の上でごろりと横になった時点で、今日もまた、無為な時間を送るという選択を無意識に下したところで、安普請のアパートのドアが小さくノックされた。
 どうせセールスか何かかと居留守を決め込み、無視をしていれば、小さなノックはトントントントンと、やけにしつこく続く。
 音が続けば続くほど、カイジの眉間にぐいぐいと深い皺が寄る。
 『うるせぇっ!!』と怒鳴り、追い返せたら、多少は気が晴れそうな気はするが、勢いよくドアをオープンしたら、おっかない人が立っているパターンは嫌である。
 ふと、遠藤との最初の出会いを思い出した。
 あのときも博打の負けと何もなさぬ自分への苛立ちで、ノックの音にセールスかと、八つ当たりしようとして怒鳴りつつドアを開ければ、どう見てもカタギに見えない遠藤が立っていた。
 ただ、このノックは遠藤のはずがない。
 なんだか音のする位置が、やけに低い……
 子供のいたずらとは思うが、それにしても執拗である。
 うちに用事?まさか……とりあえず姉は結婚しておらず、未婚の母になったとも聞いていない。たずねてくるほど親しい親戚もいない。じゃあなんだ?
 カイジは首をかしげるが、同じようなドアが続いていれば、例えば隣に用のあるがきんちょが、間違ってドアを叩いているのかもしれないと思うと、さすがに教えてやらねば気の毒かと、とりあえず様子を窺いがてらそっとドアを開けた。
 視線を落とせば黄色い帽子に水色スモックのいかにもな幼稚園ルック。普通とちょっと違うのはたすきがけのバックではなく、黄色いリュックを背負ってることくらい。
 カイジを見上げるちっこい顔に、どことなく見覚えがあるような気はするが……
 「いとうしゃんのおうちでしゅか?」
 「あ…ああ……」
 ちっこいのは何を思ったのか、うんしょうんしょといいながら、自分の背後においてあるやたらでっかいカバンを引き摺って、少しドアの内側へ入れたかと思うと、今度はカイジに向き直り、ぺこり。
 「おせわになりましゅ」
 「お……おいっ!」
 行儀よく靴を脱ごうとする得体の知れない子供に、カイジは慌てた。
 「俺はおま…君なんか知らない。なんかの間違いだろう?」
 『イトウ』なんて名前、ありふれてるし、間違って入り込んでしまった子供に対し、あまり悪い言葉遣いをするのはどうかと思い、『お前』と怒鳴りたくなるところを抑えて『君』と呼びなおし、ちっこいのの視線にあわせ、屈んでひきつり笑顔で呼びかけてみたが、ちびっこはおかまいなしでちっこい靴をぬぎ、トテトテと部屋の中に入って行ってしまう。
 「あ、おいっ」
 カイジは軽く舌打ちし、仕方なしにちびっこの持ち込んだでっかい荷物を中に入れ、半開き状態だったドアを閉めた。
 中に入ったちびっこは、6畳の部屋の中央で物珍しそうにきょろきょろしてる。
 「ほかのおうちのちとは?」
 「うちは俺一人っ!てかお前、誰!?」
 最初の殊勝な心がけはどこへ……人の話を聞かないがきんちょにカイジ、おかんむり。
 「ちっ…げぼくにあいしゃつしちまったぜ」
 ちっこいその呟きにカイジはひきつったが、がきんちょあくまでマイペースを崩さない。
 「ちとになまえをきくときは、まじゅ、じぶんからってゆーけろ、じょうしきなさしょうらから、こっちからなのってやりゅ。おれは『えんろうゆうじ』ら!」












 サイトはちびカイジですが、オフはちびゆうじ(おまけ本にはちょこっとちびカイジも出ますが)。ちびカイジはお色気満開ロリショタっこでしたが、ちびゆうじは色気ないので全年齢です。